NYのハートの島で
On New York's Heart Island.
【世界建築探訪】ニューヨークの孤島に浮かぶ、幻の傑作。「Wright Over Water」を訪ねて

私たちオーガニックハウスが大切にしているのは、フランク・ロイド・ライトが提唱した「有機的建築」の思想——すなわち、自然と建築が対立するのではなく、互いに溶け合い、高め合う住まいのあり方です。
日本でその精神を受け継ぐ家に暮らす皆様に、今回は海を越えたニューヨークから、ある特別な「建築の聖地」をご紹介します。
そこは、ボートでしか辿り着けないプライベート・アイランド。 「Wright Over Water(水上のライト)」と呼ばれるその場所には、巨匠が夢見たもう一つの物語が息づいています。
湖に浮かぶ11エーカーの奇跡、ペトラ島
ニューヨーク・マンハッタンから北へ約80キロ。美しいマホパック湖(Lake Mahopac)に、ハートの形をした小さな島「ペトラ島(Petra Island)」は浮かんでいます。

この島が特別なのは、ただ自然が美しいからではありません。ここには、フランク・ロイド・ライトの手による「A.K. シャルーディ・コテージ(A.K. Chahroudi Cottage)」と、ライトの図面を元に現代に蘇った「マッシャロ・ハウス(Massaro House)」という、二つの建築が存在しているのです。
公式サイト「Wright Over Water」では、この島へ渡る特別なツアーへの扉が開かれています。
現代に蘇った幻の設計図「マッシャロ・ハウス」
島のメインとなる邸宅は、ライトが生前に「シャルーディ・ハウス」として設計したものの、当時は予算の都合等で建設が見送られたプロジェクトでした。

それから半世紀近くの時を経て、島の所有者となったジョセフ・マッシャロ氏が、ライトが遺した5枚のオリジナル図面を元に建設を決意。現代の建築技術を駆使し、2007年に完成させたのが、この壮大な邸宅です。
湖面に向かって大胆に張り出したキャンチレバー(片持ち梁)のテラスは、まさにあの名作「落水荘(Fallingwater)」を彷彿とさせます。しかし、ここは森の中の滝ではなく、広大な湖の上。空と水、そして建築が一体となるその光景は、有機的建築のダイナミズムを全身で感じさせてくれます。
邸宅内には、岩盤がそのまま室内に取り込まれている箇所もあり、「自然を征服するのではなく、自然と共に生きる」というライトの哲学が色濃く反映されています。オーガニックハウスにお住まいの皆様なら、その空間構成にきっと親近感と新たなインスピレーションを感じられるはずです。
巨匠の息吹を感じる「シャルーディ・コテージ」
そしてもう一つ、見逃せないのが1950年に実際にライト自身によって設計・建設されたゲストハウス「A.K. シャルーディ・コテージ」です。

こちらは正真正銘のライト建築。コンパクトながらも、水平ラインを強調したデザイン、暖炉を中心とした空間づくり、そして窓から切り取られる美しい湖の風景は、ライト建築の真髄が凝縮されています。時代を超えて愛される居心地の良さは、日本のオーガニックハウスにも通じる普遍的な価値観です。
建築と旅、そして暮らしへの美意識
ペトラ島へのアクセスはボートに限られており、ツアーは例年、気候の良い時期(春〜秋)に限定して開催されています。
湖を渡る風を感じながら、島へとアプローチする高揚感。 そして、現代の技術で蘇った「夢の続き」と、巨匠が遺した「歴史の証」に出会う体験。
それは単なる観光ではなく、ご自身の住まいや暮らしに対する美意識を、より深く豊かにしてくれる旅となることでしょう。
もしニューヨークを訪れる機会があれば、この「水上の建築」へ足を運んでみてはいかがでしょうか。そこには、私たちが愛する有機的建築の、もう一つのドラマチックな姿が待っています。

Explore More: Wright Over Water 公式サイト(英語) https://wrightoverwater.com/
※ツアーの開催状況や予約については、公式サイトにて最新情報をご確認ください。