千住博の" 浅間山 "に出逢う
Discovering Hiroshi Senju’s "Mt. Asama"
記事タイトル案:【建築探訪】森とアートと、建築が溶け合う場所。「軽井沢千住博美術館」を訪ねて

出典:[KaruizawaSenju MG 1261] by Chkmm, via Wikimedia Commons
私たちが大切にしている「有機的建築」の思想。それは、建物が土地を支配するのではなく、周囲の自然と調和し、あたかもその場所から生え出たかのように存在するあり方を指します。
今回は、そんなオーガニックハウスのオーナー様にこそ訪れていただきたい、軽井沢の美しいミュージアムをご紹介します。
長野県・軽井沢の豊かな緑の中に佇む「軽井沢千住博美術館」です。
大地を平らにしない、という建築の作法
この美術館を訪れて最初に驚かされるのは、その「床」です。

出典:[221001 Hiroshi Senju Museum Karuizawa Nagano pref Japan05s3] by 663highland, via Wikimedia Commons
通常、建物を建てる際は土地を平らに造成するものですが、設計を手掛けた建築家・西沢立衛氏は、あえて元々の地形が持っていた起伏をそのまま生かしました。そのため、館内の床は緩やかに傾斜し、うねっています。
エントランスから奥へと進むにつれ、まるで森の中の小径を散策しているような不思議な感覚に包まれます。これは、フランク・ロイド・ライトがタリアセンで実践した「丘の上に建てるのではなく、丘の一部として建てる("Of the hill")」という哲学にも通じる、土地への深い敬意を感じさせます。
自然の地形に寄り添い、あるがままの姿を受け入れること。それは、私たちが住まいづくりで大切にしている「自然との共生」そのものです。
光を呼吸する「カラーリーフガーデン」
館内には、建物をくり抜くように配置された4つの吹き抜け空間(中庭)があります。 そこには「カラーリーフガーデン」と呼ばれる色とりどりの植物が植えられ、ガラス越しに柔らかな自然光が館内いっぱいに降り注ぎます。
オーガニックハウスの特徴である「流れるような空間」や「水平ライン」と同様に、ここでも内と外の境界線は曖昧です。ガラスの曲面が風景を優しく切り取り、展示されている千住博氏のアート作品、そして建築そのものが、周囲の森と一体化しています。

出典:[221001 Hiroshi Senju Museum Karuizawa Nagano pref Japan03s3] by 663highland, via Wikimedia Commons
晴れた日には木漏れ日が床に模様を描き、雨の日にはしっとりとした緑が心を鎮める。 その時々の自然の表情が、そのまま空間のインテリアとなる贅沢さを、ここでは存分に味わうことができます。
アートとしての「滝」と対峙する
日本画家・千住博氏の代表作である「滝」のシリーズ。 自然光のみで鑑賞する展示室では、刻一刻と変わる光の強さによって、滝のしぶきや深淵の色が表情を変えます。
人工的な照明で均一に照らされた美術館とは異なり、ここでは「自然の変化」こそがアートの一部です。窓辺のソファに座り、移ろう光の中で作品と向き合う時間は、まさに「居心地の良い空間」の極みと言えるでしょう。
普遍的な美意識に触れる休日を
流行に左右されない、普遍的な価値を持つ建築。 そして、自然の一部として存在する佇まい。
軽井沢千住博美術館は、オーガニックハウスにお住まいの皆様にとって、どこか懐かしく、そして新しいインスピレーションを与えてくれる場所かもしれません。
次の休日は、建築と自然が織りなす静謐な時間を過ごしに、軽井沢を訪れてみてはいかがでしょうか。

出典:[221001 Hiroshi Senju Museum Karuizawa Nagano pref Japan04s3] by 663highland, via Wikimedia Commons
■ 施設情報
軽井沢千住博美術館 所在地:長野県北佐久郡軽井沢町長倉815