ベネチアの幻のライト館
The Phantom Wright Pavilion of Venice
水の都ヴェネツィアに眠る、巨匠フランク・ロイド・ライトの幻のプロジェクト「マジエリ記念館」の物語

ル・コルビュジエ、ミース・ファン・デル・ローエと共に近代建築の三大巨匠に数えられるフランク・ロイド・ライト。自然と建築が一体となる「有機的建築(オーガニックアーキテクチャー)」の理念は、時代や国境を越えて今もなお世界中で愛され続けています。
日本にお住まいの皆様にも「オーガニックハウス」を通じてそのDNAを感じていただいていますが、今回は少し視点を変えて、イタリア・ヴェネツィアを舞台にしたライトの“幻のプロジェクト”をご紹介します。それが、美しいカナル・グランデ(大運河)沿いに建つ「マジエリ記念館(Palazzina Masieri)」です。
悲劇から生まれた、ライトへの特別な依頼
物語の始まりは1952年。イタリアの若き建築家アンジェロ・マジエリは、自身の邸宅の設計を敬愛するフランク・ロイド・ライトに依頼するため、妻と共にアメリカへ渡りました。しかしその道中、不慮の交通事故によりアンジェロは若くしてこの世を去ってしまいます。
悲しみに暮れる中、彼の遺族はアンジェロの生前の夢を叶えるため、単なる住宅ではなく「マジエリ記念館」としてライトに設計を託すことを決意しました。ライトはこの深い想いに応え、ヴェネツィアの運河沿いにふさわしい革新的なデザインを描き上げました。

伝統と革新の衝突、そして幻となった設計
1953年、ニューヨークで発表されたライトの設計案は世界中の注目を集めました。しかし、ここで一つの壁が立ちはだかります。中世の面影を色濃く残すヴェネツィアにおいて、ライトの斬新でモダンな建築を歴史的な景観の中に組み込むことに対し、当時の文化人や保守派から強い反対運動が起きたのです。
その結果、1955年にヴェネツィア市はこのプロジェクトを正式に却下。ライトが手がけるはずだったマジエリ記念館は、惜しくも「幻」となってしまいました。

もう一人の巨匠、カルロ・スカルパへの継承
ライトの案は実現しませんでしたが、マジエリ家の想いが途絶えることはありませんでした。その後、1968年に白羽の矢が立ったのが、イタリアを代表する建築家カルロ・スカルパです。

スカルパは、歴史的な外観のファサードを保存したまま、内部空間を現代的かつ芸術的にリデザインするという見事な手腕を発揮しました。1983年に完成した現在の「マジエリ記念館」は、フランク・ロイド・ライトという巨匠の“息吹”と、カルロ・スカルパの“美学”が交差する、建築史において非常に稀有で美しい空間として知られています。
長らく休館していましたが、大規模な改修を経て2024年の春から再び一般公開され、世界中の建築ファンを魅了し続けています。(公式詳細:Fondazione Angelo Masieri https://www.masieri.org/)
ライトの哲学は、日本の「オーガニックハウス」へ
ヴェネツィアの歴史的景観に新しい息吹をもたらそうとしたライトの情熱。彼は常に「その土地の環境や自然、そして住まう人の想い」に寄り添う建築を目指していました。マジエリ記念館のストーリーからも、彼が人の想いや周囲の環境をいかに大切にしていたかが伺えます。
そのライトの「有機的建築」のDNAを、日本の風土に合わせて正統に受け継いでいるのが「オーガニックハウス」です。
Classic(普遍の美)
Luxury(優雅な佇まい)
Modern(現代との融合)
流行に左右されることのないデザイン、安心のクオリティ、そして周囲の自然環境と調和する心地よい空間。ヴェネツィアでライトが思い描いたような「土地と人に寄り添う建築」の精神は、現代の日本で私たちがご提案する住まいづくりの中にもしっかりと息づいています。

おわりに
建築は、単なる箱ではなく「人の想い」と「自然」をつなぐ場所です。ヴェネツィアの運河沿いで紡がれた物語に思いを馳せながら、ライトの思想を受け継いだ住まい空間を体感してみませんか?
出典:https://www.archiweb.cz/en/b/masieri-memorial-nerealizovany-projekt-na-canal-grande